Interview

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あなたにぴったりの留学を
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中平絢子さん/ダンサー・振付師・講師/日本中平絢子さん プロフィール大阪府生まれ。4歳よりバレエを始める。
国内のコンクールにて数々の賞を受賞し、15歳で渡英。英国ロイヤルバレエスクール/英国イングリッシュナショナルバレエスクールに留学。卒業後、オーストリア・グラーツ州立バレエに入団。
2000年ドイツ・ドレスデンバレエに移籍し、4年間在籍。ノイマイヤー「幻想・白鳥の湖のように」の4羽の白鳥をはじめ、ジョンクランコ、ショルツ、グレンテトリー等の作品を踊る。
2004年Kバレエカンパニーに入団。翌年Jrソリストに昇格。数々のソリストを踊るとともに、熊川哲也プロダクション「くるみ割り人形」では初演クララ(DVDキャスト)を演じる。
2006年に渡米し、ABTCに入団。翌年アメリカ・サラソタバレエに移籍。アシュトン、マシューボーン、マクミラン、ウォルシュ等、クラシック/モダンのプリンシパルロール、ソリストを踊る。
2008年に帰国。PVやWebCMの出演、国内外の作品の振付/指導に携わると共に、バレエ・新体操の後進の指導にあたっている。
2012年にBallet Le Coeur(バレエルクール)を開講。
Ballet Le Coeur(バレエルクール)
神奈川県横浜校、大阪府堺東校
http://www.ballet-le-coeur.com
-ロイヤルバレエスクールを留学先として最初に選ばれた理由を教えていただけますか?
大阪で教えて頂いていた先生の指導法が英国スタイルと言うこともあって、幼少期からロイヤルバレエのビデオをよく見ていました。私の中での海外=ロイヤルバレエでしたので、それ以外を考えた事がなかったですね。
-そこからイングリッシュナショナルに行かれましたけど、転校されるキッカケとかっていうのは何かあったんですかね?
15歳で留学した事もあり、ロイヤルバレエスクールを出た際はまだ若かったんです。もう少しお勉強を続けたかったので、同じイギリスにあるイングリッシュナショナルバレエスクールへの転校を決めました。
-いつ頃から留学することを考え出しましたか?
コンクールに出始めた頃が一つのきっかけだったように思います。通っているバレエスクール以外の、同年代のダンサー達の踊りを見て世界が広がりました。それから11歳の頃、研修で英国のRADに行った際に留学許可が下りた事。その際はただレッスンを受けさせて頂いただけのつもりでしたので、まさか許可を頂けるとは思いもよらず、正直戸惑いました。結局一歩を踏み出す勇気がなくお断りしたのですが、そこから思いは強まりました。
-バレエスクールをご卒業後、プロのバレリーナとしてご活躍されるようになるんですが、海外にスクールから行かれるのと、お仕事で最初から行かれる方とかって、2つのパターンがあるとしたら、中平先生の場合はスクールから行かれてたとは思うんですが、何かメリットというか良かったなあと思う点とかっていうのはありますか?
留学をする際は、学校側やガードナーさん等、色々な方が手続きの手助けをして下さるのですが、お仕事となると全てを自分で行わなければならないので、その点留学で既に海外経験を踏んでいるとスムーズでしたね。
-学生時代に苦労された点、ここちょっと困ったなっていう所はあったりしますかね?
英会話を幼少期から習っていたので語学ではあまり苦労はなかったのですが、外国人との見た目、スタイルの違いにはとにかく愕然としました。同じレオタードでレッスンを受けるのですが、鏡に映った自分を見るのが嫌で仕方なかったです。そこで躓いている自分をなんとか奮い立たせてスタジオに向かう事が私の毎朝の日課でした。
-寮でのお食事とか生活とかっていうのは特に問題なかったですか?
ロイヤルの場合は自炊しなければならなかったので、ルームシェアしていた先輩にお料理を教わりながら作りました。イングリッシュナショナルの寮は食事付きでしたので、決められた時間に食堂に行って食事をするのですが、特にカロリー計算などはされていない為、自分で意識的に制限をしていました。寮と言っても門限が決まっているくらいで、それ以外は全て自分で行わなければなりません。なので、留学当初は自己管理が至らず失敗を繰り返していましたね。
-イングリッシュナショナルとロイヤルバレエスクール2つの学校で何か大きな違いとか、あったら教えてください。
中平絢子さん/ダンサー・振付師・講師/日本カリキュラムの大きな違いはなかったです。ただ、バレエレッスンを指導して下さる先生の出身が違ったので、メゾットの違いはありました。ロイヤルではロシア人の先生、イングリッシュナショナルではパリオペラ座出身の先生に教わったのですが、首の付け方が違ったり、パの名前や動き方の違いはありました。
-海外でお仕事をされる時に、日本人であるメリットとかっていうのはありましたか?
メリットかどうかは分かりませんが、海外の方には「日本人=真面目」と言うイメージが
あって、信頼してキャストを任せてもらえるという点はありました。確かに私達日本人はよほどの怪我でない限り、そう簡単に舞台に穴を開けたりしないですから。あとは、日本では発表会やコンクールで色々な作品を躍らせて頂ける機会が沢山あるので、ソロやパドドゥ等を頂いた際のテクニカル面での不安感等は少ないかもしれません。
-日本と比較してオーストリアやドレスデンでの活動など、違いがあったら教えてください。
まずは年間公演数の違いでしょうか。それから専用の劇場があり、専用のメイクさんとお衣装さんが常に同じ敷地内にいて、専用のオーケストラで踊れる、ダンサーの為の環境が全て整っている事。雇用形態も違いますね。私の場合、オーストリアはDVDで契約を頂いたので、最初はショートコントラクトでした。と言うのも、学生時代オーディション時期に靭帯を切ってしまって踊れずにいたので半ば諦めていたのですが、たまたま友人が作成していたDVDに私が映っているということで、試しに履歴書を一緒に送ってみたらまずは短期契約からならと契約を頂けました。ドレスデンは年間契約を貰えたので、シーズンオフ中もお給料が支払われて、かつ保険もあったので、病気や怪我でお休みをしても安心でした。活動としては、他のカンパニーの方々と作品を一緒に踊ったり、ノイマイヤーやボーンと言った素晴らしい振付家と作品作りから直に携わっていけた事が幸せでした。
-公演回数はどれぐらいありましたか?
ドレスデン時代の公演数は年間150を超えていたと思います。ですので、常に幾つかのリハーサルを同時進行していました。
-ドイツ国内ツアーや海外公演みたいなのもあったりするんですか?
ノイマイヤーやショルツ作品がカンパニーレパートリーにあったので、ハンブルクやライプツィッヒには行きました。海外はイタリアに数回行ったくらいで、ナショナルツアーはそれほどなかったですね。歌劇場での公演が多かったからかもしれません。
 
-プロのバレリーナになる方法として、いろんな道があるとは思いますが、どういったものが今ベストなアプローチだと思いますか?
プロ=その道で生活出来るようになる事ですから、まずは色々な方に自分の踊りを見て貰って、ジャッジして貰い、「自分を知る事」ですね。例えばコンクール、今はコンクールの賞に海外のスカラーシップが付いていたりするので、海外での可能性を測れます。海外でなくても、日本のスクールやカンパニーオーディションを受ける事で、プロとして通用するか否かを測れます。思うような結果に繋がらないなら、必ず自分に原因があるわけですから、今度はそこを探って不足を補っていく。それを繰り返す事で徐々に道は開けて行くのではないでしょうか。
-中平先生は行かれた時はご自身で探されたのですか?
中平絢子さん/ダンサー・振付師・講師/日本私の時代はコンクールにスカラーシップがあるものと言ったらローザンヌしかなかったので、そこを通るか、ビデオ審査か、現地オーディションに行くかの3択しかありませんでした。私の場合、ビデオ審査を予定していたのですが、撮ったビデオを確認したら納得の行く踊りが出来ていなくて、両親と先生にお願いをして、急遽現地オーディションに参加させて貰いました。当時は現地で受けたら絶対に受かると言う自信が何故だかあったんです。
-イングリッシュナショナルも直接学校へ行かれたのですか?
はい、そうです
-オーストリアのグラーツはお友達のビデオに写ってたもので受かったとおっしゃってましたが、ドレスデンはご自身でコンタクトをとってオーディションを現地で行ったのですか?
いいえ。ドレスデンの時もオーディションに行く友人についてドイツ旅行に行った事がきっかけでした。オーストリアの翌年の契約を頂いていたので、オーディションに行く必要性を特に感じていなかったのですが、目の前に聳え立つ歌劇場があまりにも素晴らしかったので、中を見てみたい!との興味本位から、急遽その場で申し込んでオーディションを受けさせて貰いました。受けさせて貰えたことも、受かったことも今思えば本当にラッキーでした。
-じゃあ、特にオーデションツアーであちこち周ってというのではなかったということですね?
はい、幸い。ないんです。
-今、先生として指導の方にあたられていらっしゃいますが、、海外と日本の指導でなんか違いとかを感じられた事ってありますかね?
海外にはバレエ学校があります。寮に入って、お勉強も全てそこで教えて貰える上にバレエに専念することができ、日常生活の在り方やケア等も徹底出来ますが、日本はまず学業があり、バレエはあくまでもお稽古事な
ので、時間の制限もありますし、カリキュラムに沿って指導をする上でもどうしても不足が出来てしまい、その補足を個々で行って貰うしかありません。平日にバレエに携わる時間は限られていますから、長い日常生活での意識やケアを自己管理して貰うしかないのですが、それを出来ずにいる子が多いので
指導者としてはもどかしいところです。
-イングリッシュナショナルとロイヤルバレエでのアカデミックな部分の授業のカリキュラムはいかがでしたか?
ロイヤルバレエの場合はイギリス人以外の生徒には語学勉強がありますが、そこに問題なければ授業はありませんでした。イングリッシュナショナルはバレエの歴史であったり、ノーテーションという、バレエのステップを音楽の楽譜に書き表す授業やテストがありました。勿論授業は全て英語で行われますから、最低限の語学は身に付けておいたほうがいいですね。
-ご自身が世界各国でご活躍されて、今生徒さんへご指導をされてる中で、心がけているところなどあったら教えてください?
中平絢子さん/ダンサー・振付師・講師/日本カンパニーはそれぞれのスタイルや色の違いがあり、振付家によっても使い方が異なる事は当たり前なので、生徒達にはそれを話したうえで、常に真っ白でいるようにと伝えています。学生時代は先生に言われたことが全てと考えますが、指導される先生によってメソッドやポジションもかわりますから、そこは臨機応変に、その場で求められた通りに踊るようにと伝えています。
-ヨーロッパとアメリカの違いとかっていうのは感じたことはございますか?
観客の違いや作品の違いは感じました。作品作りの段階から既に違うと思いますが、アメリカは派手さやダイナミックさ等、明るくわかり易いものが多い。その点ヨーロッパではしっとりと情感の深い作品が多く、また好まれていると思います。観客のリアクションも違うので、現役の間にそれぞれを経験させて貰えて本当に幸せでした。
-海外バレエスクール選びで必要なことなどあったら教えてください。
「一概にここがいい」とは言えません。生徒さんそれぞれの目的や求めるメソッドに沿った学校を選ぶといいのではないでしょうか。入りたいカンパニーや、踊ってみたい振付家の作品があるカンパニーの附属校に留学するといったような。留学する事だけを目的としないで、その後どうするかとか、もう少し先の矛先を考えて選ぶ方がいいと思います。留学したら卒業まであっという間に過ぎてしまうので、そこから改めて
探すよりは、その附属校に入っているほうが、次のSTEPに進みやすいと思います。
-バレリーナを目指される方にアドバイスをお願いします。
日本では先生が直々に付いて下さって個々に注意をして下さると思うのですが、海外では個々に対する注意はそこまで多くはありません。鏡にうつっている自分との戦いになりますから、それまでに必要な知識を蓄えておくこと。今いるお教室で先生が教えて下さることを聞いて、身に付ける事。確実に一つずつ目的を持ってレッスンすることですね。
-今後、中平先生が目標とされる事とか夢というか、今後の展望を教えて頂けますでしょうか?
生徒達を個々に沿った道へ送り出す事ですね。私が踊ってこられたのは、幼少期に指導して頂いていた先生、野間康子先生のお陰です。指導側に回った今、今度は私が先生にして頂いた土台作りを、生徒達にと思うと責任重大ですが、やりがいを感じています。いつか巣立っていく生徒達を、彼女達が向かいたい先に目がけて飛ばしてあげる事が私の夢です。
-中平先生にとってダンス、バレエとはどういったものでしょうか?まだ、付き合い方というのは、これからどんどん続くとは思いますけれども、現段階ではどういう風な存在ですか?
人生そのもので、なくてはならなかったもの、ですね。物心ついた時からバレエをしているので、違う事をやってみたいと何度も思いましたが、バレエの道を外れようとする度に何かしらのオファーを頂いて、繋とめられてきました。指導に入らせて頂くきっかけも、スクールを立ち上げるきっかけも、全てオファーを頂いたからなんです。ですので、今まで出会った方々とのご縁に感謝し、これからはその恩返しをしていきたいと思っています。
-是非、今後も多くの素晴らしいダンサーを輩出を期待しております。本日はどうもありがとうございました。
中平絢子さん/ダンサー・振付師・講師/日本ありがとうございました。